瀬名 秀明 (作家)
東北大学大学院薬学研究科在学中に 『パラサイト ・ イヴ』 でデビュー。 『インフルエンザ 21 世紀』 をはじめ著書多数。『NHK 100 分 de 名著 『アーサー ・ C ・ クラークスペシャルただの 「空想」 ではない』』 で第 52 回星雲賞ノンフィクション部門受賞。(撮影=佐々木隆二)
17:00-17:10 | イントロダクション 瀬名秀明(作家) |
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17:10-17:30 | 話題提供1 「増大するパンデミックリスクとそのリスクの低減のために世界がすべきこと」 押谷仁(東北大学医学系研究科・教授) |
17:30-18:00 | 話題提供2 「パンデミックウイルスの特徴と起源を探る」 佐藤佳(東京大学医科学研究所・教授) |
18:00-18:30 | 話題提供3 「生物多様性異変と新興感染症ウイルス~新たなる自然共生社会を目指して~」 五箇公一(国立環境研究所・生物多様性領域 生態リスク評価・対策研究室・室長) |
18:30-18:40 | 休 憩 |
18:40-20:00 | モデレーター 瀬名秀明 パネリスト 押谷 仁・佐藤 佳・五箇公一 討議テーマ 1. なぜ生態系の変化がパンデミックのリスクを増大させるのか 2. パンデミックのリスクを増大させている要因はなにか 3. ワクチン開発に偏重している世界の対応の問題 4. なぜパンデミックのリスク低減策は進まないのか 5. 将来展望ーリスク低減のための提言ー 6. 次のパンデミックに備えるために何ができるのか |
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東北大学大学院薬学研究科在学中に 『パラサイト ・ イヴ』 でデビュー。 『インフルエンザ 21 世紀』 をはじめ著書多数。『NHK 100 分 de 名著 『アーサー ・ C ・ クラークスペシャルただの 「空想」 ではない』』 で第 52 回星雲賞ノンフィクション部門受賞。(撮影=佐々木隆二)
増大するパンデミックリスクとそのリスクの低減のために世界がすべきこと
【講演要旨】地球の生態系は人的要因により大きな影響を受けており、生態系の変化とともに新興感染症が出現するリスクはかつてないまでに高まっている。COVID-19のパンデミックは偶然起きたものではなく、起こるべくして起きたものであると考えるべきである。近い将来、より深刻な被害をもたらすようなパンデミックが起こる可能性も十分に考えられる。COVID-19の反省が十分に生かされず、もとの世界に急速に戻っており、COVID-19の原因ウイルスの起源やワクチンの公平な分配をめぐって、国家間の対立が深刻化するなど、世界の脆弱性はむしろ高まっている。増大するパンデミックリスクに対応するためには、パンデミックのリスクを低減していくことが必要である。パンデミックを防ぐことは、世界のすべての国に共通の利益があるはずで、グローバルな公共財(GlobalPublic Goods)として各国が協調してそのような体制を構築していくことが求められている。
【講師紹介】WHO 西太平洋地域事務局 ・ 感染症地域アドバイザーとして2003 年の SARS の世界的流行で陣頭指揮をとり、 封じ込めに成功。 COVID-19 パンデミックでは政府の分科会などの委員として対応にあたる。 日本の対応について New YorkTimes やNature に寄稿するなど世界的にも注目された、 ウイルス学 ・ 疫学のエキスパート。 山登りをこよなく愛する山男。
パンデミックウイルスの特徴と起源を探る
【講演要旨】新型コロナウイルスの発生当初からこれまで、演者は、国内外の若手研究者有志と協力し、研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」を組織し、新型コロナウイルス変異株の特性の理解に向けた学際研究をリアルタイムに展開してきた。本講演では、新型コロナウイルス変異株について取り組んできた、G2P-Japanコンソーシアムの研究活動を概説する。そして、現在演者の研究室で進めている「次のパンデミック」に備えるための研究内容を紹介するとともに、これからの研究の展望や、「次のパンデミック」への備えとなる研究のあり方などについて広く議論したい。
【講師紹介】東北大学農学部出身。 COVID-19 の原因ウイルスの変異株やその亜系統の解析などで世界トップクラスの研究成果を挙げている気鋭のウイルス学者。
【「新型コロナウイルス学者」 の平凡な日常】 ( 週刊プレイボーイ ) でコラムを連載し社会に発信するなど、その活躍はアカデミアにとどまらない。
生物多様性異変と新興感染症ウイルス~新たなる自然共生社会を目指して~
【講演要旨】人間にとって厄介な存在とされる病原性微生物やウイルスも、人間が登場するはるか以前よりこの地球上に生息し、生物多様性の一員として、重要な生態系機能を担ってきた。それは特定の生物種が増えすぎることのないよう、生態系のバランスを維持するための「内なる天敵」としての役割である。そしてさまざまな病原体が地域ごとに宿主生物と共進化の歴史を経て固有の関係を構築してきた。この病原体と生物多様性の共生関係が、今、人間による環境改変によって破壊されつつあり、病原体が本来の生息地からスピル・オーバーして他の地域へと拡散し、「新興感染症」のパンデミックをもたらすリスクが増大している。加速するグローバル化の中で、人間社会は、自然界から噴出した病原体の格好の標的となっている。その新興感染症の最先端が2020年以降、人間社会を襲った新型コロナウイルスSARS-CoV-2であった。パンデミックから4年を経て、この新型ウイルスの猛威もいつしか収まり(というか、収まったことにして・・・・・)、感染症リスクに対する社会的関心が薄まる中で、我々は今、改めて次なるパンデミックに対する危機意識を高める必要がある。人間活動による環境変動と生物多様性の劣化は今も加速しており、新興感染症のリスクはさらに高まっている。ポストSARS-CoV-2のリスクを制御するために、私たち人間は、地域固有性を重視した、持続可能な社会・経済システムの構築へと舵を切っていく必要がある。
【講師紹介】保全生態学者 ・ ダニ学者。 ヒアリをはじめとする外来種対策や農薬リスク管理など生態リスク対策研究に従事。 生態学の見地からパンデミックの問題に取り組んでいる生物多様性のエキスパート。 オールブラックの服にサングラスというハードな風貌がトレードマーク。メディア出演多数。 趣味として CG で生き物の絵を見事に描く。